平日にサウナに行くニート

一昨日、17時まで自室で寝ていたら用事があった父が来て「いい身分やのうお前。あんまり親をナメんじゃねえぞ、就職する気がないんだったら追い出すからな」みたいなことを強めの語気で言われ、俺としては何回目だよこの茶番と呆れながらも「ハイ、ヘイ、エイ」とテキトーに返事をし役を演じた。以前ツイートしたこともあったが、父の職場でコロナ感染者が出たせいでテレワークとなり毎日鬼が家にいる。それまでは昼間は家に自分ひとりだったので鬼の居ぬ間に洗濯し放題だったが今となってはゲームはできないしyoutubeも見れないので専ら音が出ないTwitterやらネット記事やらを眺めたりしている。非常に生きにくい。ヤんなっちゃうよもうねぇ。まぁいい年こいて働いていない僕が悪いんですけど。そんなわけで家にいるといつ雷落とされるかもわからないので翌日は朝から外出することに決めその日はさっさと寝た。

 

翌朝と言いたいのだけれど、前日は17時まで寝ていたので何回か就寝中に起きてしまい、取り返そうと寝直したりしていたら昼の12時頃になっていた。その日は住民票取得と前の会社の口座振り込みに行く用事があったため、家を出ていく際にどこに行くか尋ねられたときのアリバイもバッチリだった。幸い父は仕事で忙しいようで尋ねられることもなく家を出ることが出来た。住民票と口座振り込みはすぐ終わり、18時まで暇になった。18時までというのは父親は家のリビングで仕事をしており、18時頃になると父は自室に戻り、その後ほとんど自室から出てこなくなる。勝ち確の時間までかなり暇があるのでとりあえず名古屋駅に向かった。

 

名古屋駅の近くのビックカメラの100均でやっすいイヤホンを買い、近くのマックで昼飯にした。昼飯のスパイシービーフバーガーとソフトツイストを頬張りながらこの辺に有名なサウナがあることを思い出し、思い立ったが吉日で早速行ってみることにした。

 

検索をかけていると名古屋駅周辺ではなく栄周辺だったので地下鉄で栄駅に移動し、目的地まで徒歩。ウェルビー栄というサウナ付きのカプセルホテルに到着した。

 

受付で鍵を渡されサウナ用パンツ一丁になり早速突入。サウナが売りの施設ということもあり、いくつかの種類のサウナがあった。普通のサウナ、森のサウナ、冷凍サウナ、アイスサウナそれぞれ特徴があるのだろうけど、サウナ初心者としては普通のサウナと森のサウナの違いはあまりわからなかった。森のサウナの方が狭く、セルフロウリュが出来て本場のフィンランドのサウナに近いらしいが、初心者が他の利用者もいる中でバシャバシャロウリュするわけにもいかないので他人任せのサウナという意味でどっちも大差なかった。冷凍サウナはひんやり冷たく居心地が良かった。枯れ枝の集めたやつをどう使うのかはわからなかったが他の利用者も使ってなかったのでそこまで重要でもないのだろう。そしてアイスサウナ、えーこれを考えたやつ相当バカです。室温マイナス25度。恐る恐る入ってみる、床に足を出した瞬間「ハゥワウァウヮ」と情けない声が出た。床だと思っていた数十センチ上から水面になっていた。足が水面に触れたとき少し割れる音がした、水面が凍っている、寒いなんてもんじゃない死だ。手すりも氷の上からさらに凍っている。このサウナの中で足滑らせたら死ぬぞという恐怖だけがあった。おおよそ把握した後さっさと出た。しばらくこの施設にいたがこのアイスサウナに入っていった人間はほとんどいなかった。当たり前だ、金払ってワカサギのいる池に足突っ込むやついるわけねえだろ。でも本当の「整い」、「リミットオーバーアクセル整い」に至りたい人間は進んでつかるのだろうな、そんな気がした。

 

一通り施設の中で出来ることを確認した後、サウナで「整い」を得る方法が書かれていたのでその通りにしてみた。サウナに入り洗体した後水風呂、これを3回繰り返すらしい。普通のサウナに入っていると従業員が入ってきてロウリュが始まった。「本日はご来店いただき誠にありがとうございます。今回のロウリュはオレンジアロマとなっております、是非お楽しみください」さながら大規模テーマパークのアトラクションのクルーのような言いぶりで石に水をかけていく。直後柑橘の熱風が裸のおっさんたちを襲う、おっさんはただひたすらにこれを耐えていく。おっさんはこの熱さを凌いだ後の水風呂、さらにはその後のビールという希望を信じ耐えている。

 

世の中ではサウナブームらしく、逆張り人間の俺はサウナのどこが良いのか半信半疑だったが、行ってみてわかったのはサウナは一種のマインドフルネスだということだ。現代人は色々なことを同時に脳内で処理しながら生きているが、蒸気のこもった部屋に長くいると次第に頭がボーっとして思考力を失っていく。それでも頭の中に残ったことは考えるに値することで、つまるところ残ったことだけ考えていればよい。今ここに集中することで無駄が削ぎ落とされていく実感がサウナの魅力なのだろうなと感じた。筋トレと近い気もする。そういえば筋トレもブームだったし、何かに集中することで様々な煩わしさから解放されるというのは現代人の目標なのかもしれない。

 

そんなことを考えながら、サウナを終えた。1時間だけいるつもりだったのに長いことボーっとしているうちに3時間経過しており2200円も支払ってしまった。九大伊都キャンパスの近くにあった伊都の湯どころは何時間いても550円くらいだったのであそこは良かったと昔を懐かしみながらウェルビー栄を後にした。「整い」を得られたのかはわからなかったが足取りは軽かったので帰りにミスタードーナツに寄ってゴールデンチョコレートを8個買って帰った。

 

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