中高生と一緒にYouTuberを見てきたよー

 6月の上旬にYouTuberのもこうが自分の近所の高校に来るという情報を捕まえ、さっそく予約サイトを開くと応募フォームが現れた。もこうはどうやら第3部に登場するらしいので1部と2部にも興味本位で応募してみたら当選、せっかく抽選に当たったので3部全てに参加することにした。

 

 当日は寝不足の身体をどうにか覚醒させ電車に乗る。訪れたことのない駅だったので少々慌てたがどうにか目的駅に到着し、高校まで徒歩。前日に駅の乗り換えと徒歩経路を調べておいたものの、大人数が雪崩れるようにある方向に歩き出したためこの先が目的地であることを確信し流れに身を任せると無事到着。

 

 高校に着くと順番に当選確認があり、その後校内に通された。訪れた高校は県内屈指の進学校らしく内部は綺麗に清掃されており、どことなく母校で見た景色に似て懐かしかった。1部の講座の時間ギリギリに到着したため着席するとすぐ講座が始まった。

 

 1部の講師はかっつーという人で高専ネタや銀だこで働いていたエピソードトークで人気を得て今やチャンネル登録者は83万人のかなり大手のYouTuberだ。正直俺は彼自身に全然興味がなかったが以前自分が視聴していたライバロリという配信者とコラボしていたのを知っていたし、世間の人気で天狗になってるやつを一目見たくて講座を受けてることにした。予習のために観た動画内では突然下ネタを言ったり大声を出すのであまり知的な印象はなかったが結果的に今日3部の中で一番知的な講座だった。まずかっつーはYouTubeの仕組み(視聴者と投稿者と広告主の関係)について説明し、仕組みの中で上に行くためにおバカキャラを全て計算で演じていることを話した。より広告収入と人気を得るために3H戦略を掲げていることを明かした。3HとはHero(人々の注目を集める)、Hub(見込み客とのつながりをつくる)、Help(視聴者のニーズにこたえる)の3つの頭文字を取ったもので3Hに基づいて彼の動画は作られているそうだ(3H戦略は動画マーケティングの世界では有名な考え方らしいので気になったらググってくれ)。またYouTube内のトレンドにも敏感で最近は#Shortsが流行っているらしく彼も常にアンテナを張り自分の動画に流行を取り込んでいるらしい。確かに俺も1分で遊戯王を解説してくれる動画が好きで観ているが流行の一端に自分も知らぬ間に関わっているのかもしれない。他にもYouTuberを目指すなら機材は最良の物を選択すべきこと(生産性上昇や視覚的効果を高める目的)など語っており、普段の動画には見られない計算高いかっつーがいた。俺は毎日YouTubeを観ているがなんだかんだ「YouTuberは他の世界で生きられなかった人間たちの掃きだめ」の印象を抱いていたが、トップのYouTuberがここまでハードに自分を追いこんで動画制作していると知り畏怖と「あんまり楽しそうじゃないなこの人」の感情が生まれた。

 

 その後質疑応答へ移り、次々にどうでもいい質問の手が挙がる中1人面白いヤツがいた。質問内容は「自分は登録者100人程度のYouTuberだがどうすれば人気になれるか」というものでそんな質問にかっつーは答えようもないのだが俺は何百人もいる中で自分が雑魚だと発表できる勇敢さに感服し、講座が終わり次第話しかけた。2部までの間に1時間弱時間があったので雑魚YouTuberと色々話した。出身、高校、今何をしているかなどを話し、ついでに雑魚のチャンネル登録をした。帰ってきてから動画を観たのだけれどとても観られたものではなかったのでリンクを貼ったりはしない。俺が今書いているこのブログも俺を知らない人が見たらキツイだろうしあまり強く言えないのだけど視聴が辛かったのですぐチャンネル登録解除した。しかし勇気は素晴らしかったのでいつか少しは報われてほしいものだ。

 

 昼食休憩の後2部が始まった。2部の講師に選んだのは古屋雄作という人でこの人は『うんこ漢字ドリル』や『人を怒らせる方法』などの作品を手掛けており、本講座のタイトルが「人を怒らせずにうんこをまき散らす方法」と一際目を引いたため選ばない選択肢はなかった。タイトルの「人を怒らせずにうんこをまき散らす方法」の意味は当初の想像通り「人の反感を買わずに『うんこ漢字ドリル』を物流に乗せる方法」という意味で驚きは少なかったものの、その方法論は良かった。列挙するほどではないため割愛するが、反感を買わないための5つのルールがありどれも公序良俗に反せずルール、モラルから逸脱しないことという趣旨だった。自分はインターネット世界におけるルールやモラルに対して諦めているところが多々あり、「面白さのためなら何でもあり」信者になりかけていたのを3歩くらい引き戻された感じがした。古屋さんは東海中高の出身で中高生のために『うんこ英単語』が配られたのが余ったため外部の人間だがお土産に頂戴した。

 

 移動と休憩後に3部が始まった。3部はお目当てのもこうの講座であり、収容人数の関係上校内で最も大きい講堂が講義場所だった。2部ではその場所で人気Youtuberはなおでんがんのでんがんの方が来ていたらしいが3部は2部以上に盛り上がっただろう(でんがんを過小評価してるかも)。もこうを観るために6~700人が集結したのだが講座タイトルは「ゲーム実況者もこうの人生相談」で簡単な自己紹介の後もこうファンなら諳んじられる中学の卒業式と潰瘍性大腸炎と会社の同僚に配信がバレた話をして会場が温まってからグーグルフォームでの人生相談が始まった。始まったものの、もこうは何の準備もしてきていないのでただ送られてきた相談に相槌を打ったり生返事をしたり誰でもできる助言を言ったりするだけなのだがそれだけで会場はウケにウケていた。途中人生相談が落ち着いてきたところで突然十八番のシャルルや春よ来いの他に創価学会の歌を歌ったり壇上のピアノを勝手に演奏したり頭に水をかけたりとやりたい放題なのだがそのたびに会場は盛り上がっていた。そのウケはもちろん「もこう」の肩書きがあるおかげなのだけれど、もこうは先のかっつーや古屋さんとは違い、何の準備もしていないしその結果声は出ないし演奏できないし水をステージにこぼして実行委員の高校生たちに迷惑をかけたりととにかく平気で失敗できる。でも誰も嫌じゃない、「準備してから来いよ」と誰も言わないし、飲み水が零れてそれを拭く委員会の生徒たちも少し嫌そうな素振りを見せるだけで実際楽しそうだった、ここに本物のYouTuber「オワコンの向こう側」を見た。かっつーが「計算の男」ならもこうは「無計算の男」だ。手札が何もなくても壇上に上がって皆を味方につける、とんでもない才能を見た。「うわぁ~俺もこんな風になりたい!」そう思わされてしまった、本当に楽しい1日だった。